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OB・OGインタビュー
2024/12/25
“思うより行動”の信念が実を結ぶ
日光銘菓を東京へ
商業学科 2000年卒業
日光甚五郎煎餅「石田屋」常務取締役
石田 雅一氏
Q 日本大学商学部に入った理由を教えてください。
高校は日大ではない大学の附属校だったのですが、新たな環境での出会いや経験を求めて外部受験をすることにしました。実家が商売をしていたため、小さい頃から「いずれ継ぐのだろう」という意識があり、商学部や経済学部を中心に受験。高校生の頃から週末は東京に遊びに行く機会も多く、上京への憧れもあり、日本大学商学部に入学することを決めました。
Q 大学時代はどんなことをされていましたか?
もともとシャイな性格でしたが、大学時代に居酒屋などの接客アルバイトを経験したことで人と話す楽しさを知り、コミュニケーションの幅が広がりました。
商学部では国際経済ゼミに入りました。地元・日光は昔から外国人観光客が多く、外国人とのコミュニケーションに憧れを抱いていたからです。ゼミでは英語を使う機会も多く、国際的視野が広げることができました。おかげで今では、道案内や美味しいものの紹介程度は案内できます。また、海外への興味から、長期休暇にはバックパッカーとしてアジアを中心に旅をしました。特にシンガポールでの鉄道旅は印象深い思い出のひとつです。ゼミの同期には、テレビで活躍するお笑いコンビ・トレンディエンジェルの齋藤司くんもおり、彼とはバックパッカーの旅にも一緒に行きました。大学時代たくさんの思い出を共有した親友で、今でもよく連絡を取り合っています。
Q 商学部卒業後の進路は?
30歳で日光に戻ってくるまではサラリーマンをしていました。家業のことも考えて、食品や菓子関連の会社を中心に就職活動を行い、飲料メーカーに入社。人とのコミュニケーションに面白さを感じていたため営業職を希望しました。しかし、私が配属されたのは、事務などの別の業務であったため、早々に退職してしまいました。その後はIT企業の営業や議員の運転手など、さまざまな仕事に挑戦しました。最終的には家業に入るつもりだったため、幅広い経験を積むことを意識していました。
Q 家業である石田屋について教えてください。
石田屋は明治40年に創業の栃木県日光市に本店を構える、煎餅・和菓子の老舗です。主力商品である日光甚五郎煎餅は、日光の定番土産として親しまれています。その名前は、日光東照宮の「眠り猫」を彫った左甚五郎にあやかって名づけられています。現在は父が社長を務めており、私が5代目を継ぐ予定です。
Q 家業に入ってからはどんな仕事をされていますか?
商品開発や店舗開発、会社の成長戦略に携わっています。社長である父に提案しては、いつもダメ出しされています(笑)。社長はもともと、日光の中だけで成り立てば良いという考えの人です。最初に宇都宮への出店を提案した際にも反対されました。今となっては、手段がわからなかっただけなのかな、とも思いますけどね。
宇都宮出店を足がかりに、いつかは日本の商いの中心である東京で商売したいという思いを抱いていました。そして百貨店とのお取引で培ったご縁もあって、運良く2017年のGINZA SIXオープンのタイミングで、念願の東京出店が実現しました。
Q 都内の2店舗(銀座・六本木)は石田屋のブランド「甚五郎」の名前で出店されていますね。
栃木では土産として広く知られている当社の商品ですが、手間暇かけて作り上げたものを東京という大舞台で勝負したいという思いがありました。東京で舌の肥えた方々にも良さを伝えていきたい、旅行土産から一段上の価値を持つ存在にしたいと思い、都内へ出店する際に新ブランドを立ち上げることにしました。ブランド名の「甚五郎」は、石田屋のルーツが江戸時代、上野でお米の問屋をしていたこと、甚五郎煎餅のルーツを辿るという意味を込めて名付けました。
「甚五郎」に置く商品は、まずパッケージをモダンなデザインに一新。それから都内限定の商品や新商品をつくりました。当初は社員のみんなで味や形、硬さなど100種類ほど試作し、その中から20種類ほどを選んで商品化しました(現在のラインナップは約30種類)。商品開発のこだわりとしては、定番の安定感も大切にしつつ、少し尖ったニッチな部分を攻めるような商品を出すようにしています。攻めるがゆえに廃盤が出るなど、もちろん失敗もありますが、未知に挑戦することで色々な方面から注目してもらいやすいと考えています。
Q 都内に出店されたことで何か変化はありましたか?
ギフトや手土産としてご購入いただくことが増えました。栃木の店舗は旅行土産として買っていただく方が多いですが、都内の店舗では30代以上の感度の高い女性や、ビジネスマンなどが多く、客層が違いますね。お煎餅を若い方に買っていただけるのかという不安もありましたが、パッケージを変え、味を現代的なものにすることで、手にとっていただけています。
やはり東京だと、購入された方が他の方への手土産や贈り物として使われる機会が多く、それをきっかけに知っていただくことも増えますし、広がりにつながっています。雑誌に取り上げられたり、有名人のお気に入り菓子として紹介されたりすることで、お問い合わせいただくことも増えていて嬉しいです。
Q ここまで家業を盛り立ててきた理由は?
日光に戻った当初は、東京の銀座にお店を出せるなんて全然思ってもみなかったのですが、家業を盛り立てていこうと強い信念を持って、一生懸命取り組んできました。その信念とは、「思っているよりも行動する」ということ。さまざまな場所に足を運び、人と話をしながら信頼関係を築き、その中で「どうすれば良いのだろうか」と相談をしながら進めてきた結果、徐々に形になっていきました。だからこそ、考えるより行動していれば叶うこともあると思いますね。
Q 今後の展望について教えてください。
お煎餅は大きな言い方をすれば、日本の食文化のひとつだと思っています。ですから、日本の伝統的な食文化を未来に残すためにも、幅広い世代の方々に楽しんでいただきたいです。そのために都内の店舗も増やしていきたいですね。
また最近は、外国からの問い合わせメールが増えてきましたが、今は海外へ商品を送る体制が整っておらず対応できていません。訪日した外国の方からは美味しいという感想をいただいているため、きっと海外でも評価をいただけるはず。今後は外国にも発信していきたいです。
株式会社 石田屋
石田屋は栃木県日光市に本店を構える、明治40(1907)年創業の老舗煎餅店です。
日光甚五郎煎餅は日光の定番土産であり、全国菓子博にて多数受賞しています。
日光東照宮の「眠り猫」を彫った
左甚五郎にあやかって煎餅の名がつけられました。
栃木県内の日光本店、宇都宮パセオ店、今市工場のほか、
甚五郎ブランドとしてGINZASIX(銀座)店、六本木ヒルズ店を営業しています。
アクセス 〒321-1434
栃木県日光市本町4-18
TEL 0120-25-1195
URL http://www.jingorou.com
老舗らしく趣ある佇まいの石田屋日光本店と、
モダンでおしゃれな雰囲気のGINZA SIX 地下2階「甚五郎」。
お近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りください!