濵田 捷利氏

2022/11/04

創業から300年 老舗の立ち並ぶ日本橋で
つながりを大切に

商業学科 1965年卒業

日本橋大伝馬町「江戸屋」12代目店主

濵田 捷利

Q 江戸屋は享保三年(1718年)創業と大変歴史がありますね。昔からお店を継ぐことは考えていらっしゃったのですか。

私が小さい頃に父が戦死しまして、この店は祖父母が営んでいました。そういう訳で昔から「おまえがやるんだよ」と言われていましたね。
商売をしているということで商業高校へ行ったのですが、周りから「大学は出た方がいい」と言われ、神田の予備校に通いました。そのおかげか、大学受験はいくつかの学校に受かったのですが、高3の頃学生運動が盛んになり、比較的過激な活動が少なかった日大を選びました。

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Q 日大商学部時代で思い出に残っていることを教えてください。

学生時代は、オール日大の体育会空手部で副キャプテンをしていました。練習は厳しかったですね。両国にあった練習場所の日大講堂はとにかく広かったのですが、そこを今では禁止されているウサギ跳びでぐるぐる回ったりして。合宿で、別府まで鈍行で20時間以上かけて向かったことも大変でしたが、今では楽しかった思い出です。

Q 4年生だった1964年頃はさまざまな出来事がありましたね。

前回の東京オリンピックが開催しました。開会式は千駄ヶ谷の東京体育館の前で、空手部のみんなと券の発売を手伝いましたね。ネットなんてありませんでしたから。現場の責任者をしていましたが、人の誘導がとにかく大変でした。
また、その頃には商学部の砧校舎も完成しました。そのため私は、2年生までは下高井戸、3年生で三崎町、4年生で砧の3つの校舎に通学しました。当時はキャンパスに色々な学部が集まっていて仲良くなれました。卒業後は空手部つながりで学生連盟の役員もさせてもらいましたし、日大をきっかけにさまざまな人たちと友達になれたと思います。

Q お店のことについても教えてください。江戸屋ではどのような商品を扱っているのですか。

個人のお客様向けのヘアブラシや歯ブラシ、法人に向けて工業用のブラシなど、約3,000 種類の刷毛やブラシをつくっています。IT 関係や半導体を作るときに使うブラシなど、近代ニーズにもお応えして、常に使う人の立場に立つことをモットーにしています。
うちで扱っている天然繊維の商品は長持ちしますし、リピーターも多いですね。うちにしかない商品を求めて、ヨーロッパなど海外のお客様も来てくださいますよ。
また、伝統や品質の高さを評価されて、天皇陛下がお乗りになる新幹線用のブラシも任されました。

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Q お店の経営以外でも大きな役割を担っているとお聞きしました。

毎年10 月に開催される「日本橋恵比寿講べったら市」で、保存会会長を務めています。今年は3 年ぶりの開催だったので、たくさん人が来てくれました。祭りの中心となる宝田恵比寿神社の御朱印もうちで担っているのですが、前もって用意していた分が足りなくなったくらいです。
また、「東都のれん会」という老舗の集いにも参加しています。これは「とらや」「千疋屋」など三代・100 年以上続く店から成る会です。旅行に行ったり、歌舞伎の襲名をお祝いしたりと、定期的に集まっていまして、老舗同士互いに学び、親睦を深めています。

Q さまざまな縁を大切にされているのですね。

これからも、日大時代の校友や日本橋という地域、老舗同士のつながりなど、さまざまな縁を大切にしていきたいと思っています。

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馬毛で作った判子。
昔は木箱に毛の判子を押していたそう。

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店内の一角には、
刷毛の歴史が紹介されている。

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歴史を感じさせる、大正時代の注文帳

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注文帳には今も鮮明に記録が残り、
当時の様子が伺い知れる。

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日本橋 江戸屋

日本橋にある刷毛・刷子の専門店・江戸屋は、
享保三年(1718 年) 創業の歴史と伝統ある老舗です。
七代将軍家継の時代、
初代利兵衛が将軍家お抱えの「刷毛師」に任じられ、
享保三年に将軍家より「江戸屋」の屋号を与えられました。
江戸刷毛の専門店として開業し、
以後は時代の需要に応じて、明治時代からはブラシ作りを始め、
現在も多種多様な用途に合わせた商品作りを行っています。

アクセス 〒017-0847
東京都中央区日本橋大伝馬町2-16
TEL 03-3664-5671

特徴的な商家のファサードを持つ社屋は、関東大震災後の復興期に建てられた人造石洗出し仕上げの店舗兼住宅で、国登録有形文化財に指定されています。

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